エネルギービジネスとブロックチェーン #1 電力システム改革とUber/Airbnb

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ブロックチェーン技術の普及による分散型社会の到来といわれていますが、電力エネルギーシステムはブロックチェーンとの親和性の高さから、他の分野よりも進んでいます。

なぜ、電力システムはブロックチェーン技術の取り組みは進んでいるのか

・送電分離

・小売および発電の全面自由化

この二つの変化がすでに起こっていた

それまでは、発電、送電、販売が一つの統合された会社で全て行われていましたが、この二つの変化により、垂直統合型から自由化され分離されました。

垂直統合型の電力システムでは発電が重要であり、高度成長時代にはそのメリットを発揮した。一方、自由化・発送電分離に移行すると電力ネットワークの運用管理に重要性がシフトする。言い換えると、ニーズに合わせて電源を使えるようにすることから、既存の設備をうまく使って需要を満たし安定供給を維持することに重点が移りつつある。

そのため、シェアリングエコノミーサービスを展開するUberやAirbnb自体は設備を所有しないで、未利用資源をシェアできる需要と供給をマッチングさせるのに似ています。

電力エネルギーは太陽光発電や風力発電、バイオマスにより発電方法の多様化ばかりでなく、蓄電池の発展により電力エネルギーを所有し、シェアリングエコノミーサービスのようにシェアすることができ、P2Pで取引できるようになります。

注目したいのは発電設備や蓄電池技術が発展することで、電力エネルギーに所有(持つ)考えが一般的になることです。

確かにそうなれば、ブロックチェーンは発電部分でも販売部分でもエネルギーの無駄をなくし、安定供給を維持できる上で欠かせない技術となりそうです。

改めて社会を見渡してみると、電力エネルギーのように、製造から販売まで行っていた垂直統合型業界から、規制緩和された業界は他にも見受けられます。

そういった視点で世の中を見渡してみると、案外身近なところにブロックチェーンの技術と親和性が高い業種が、あるかもしれません。

12年以上前の小泉政権から始まった規制緩和が、新しい効果をあげる時期に来ているようにも思います。

 

エネルギービジネスとブロックチェーン #1 電力システム改革とUber/Airbnb

エネルギービジネスとブロックチェーン #1 電力システム改革とUber/Airbnb 大きな改革が進む業界では新しい技術や手法が積極的に取り入れられる。本連載では、システム改革を背景としてブロックチェーンの導入やICOの事例を多数生み出している電力・エネルギー業界を取り上げる。解説するのはこの分野を手がける大串康彦氏。第1回は、エネルギー業界で起こっている変化を俯瞰し、次回から個々のテーマや事例を掘り下げていく。(編集部) 世界中でブロックチェーンをエネルギー分野に応用する事例が増えている。開発の主体となる組織やコンソーシアムの数だけで80を超す事例があり、コンソーシアムのメンバーとして参加している企業を含めると100以上の組織がエネルギー分野でのブロックチェーンに取り組んでいる(筆者調べ。これらは 筆者のブログ記事 で紹介している)。 ブロックチェーンのエネルギー分野での応用が増えていることは、ここ10~20年くらいで起こった変化が土台となっていると考える。逆に言うと、過去20年間に電力業界で起こった変化がなければ、ブロックチェーンを電力・エネルギー業界に応用する試みがここまで浸透することはなかっただろう。 その土台となっている変化とは何か? まず挙げられるのが「小売および発電の全面自由化」と「発送電分離(発電部門と送配電部門の分離)」である。国や地域ごとにその実施形態や時期は違いがあるが、日本では「電力システム改革」の中で、2015年から2020年にかけて実施されている。従来の電力会社は「垂直統合型」であり、発電・送配電・小売の事業主体が1つの組織体の中に存在していた。日本では地域独占と呼ばれ、10に分けた地域に1つずつ垂直統合型の電力会社が存在していた。しかし、自由化・発送電分離後は、送配電が公共インフラを提供・管理する規制領域として継続し、発電部門と小売部門が多様な事業者が参入する競争領域となった。また、発電と小売の相対取引のほか、卸売市場を介しての取引も増加する。図1のようなイメージである。 自由化・発送電分離のインパクトとしては、多様なプレイヤーが発電や小売に参入できるようになったことがまず挙げられるが、それだけではない。垂直統合型の電力システムでは発電が重要であり、高度成長時代にはそのメリットを発揮した。一方、自由化・発送電分離に移行すると電力ネットワークの運用管理に重要性がシフトする。言い換えると、ニーズに合わせて電源を使えるようにすることから、既存の設備をうまく使って需要を満たし安定供給を維持することに重点が移りつつある。 これはライドシェアのUberや民泊のAirbnbの思想と通じるものがある。需要がうなぎのぼりのときには新規のタクシー車両やホテルの建物をどんどん導入して、需要を満たせばよい。しかし、需要のピークに合わせて設備を導入すると、オフピーク時は設備の稼働率が下がり、事業の採算が問題となる。一方、新規設備の導入を一切止めてしまうとピークの需要に対応できなくなる。そこで、既存の未利用資源の活用により需要を満たすというコンセプトが出現した。 これがUberやAirbnbである。説明するまでもなく、UberやAirbnb自体は設備を所有していない。車の空席や家の空室などの未利用資源と移動や宿泊の需要をマッチングさせることによって事業を拡大してきた。 実は自由化・発送電分離後の電力も同じである。顧客(需要家)の資源も含め、未利用資源を有効に稼働させ、電力システムを安定して運営するという考えに移行したのである。エネルギー業界ではよく語られる「デマンドレスポンス」「バーチャルパワープラント(VPP)」などは発電設備を増やすのではなく、需要側の設備を有効活用することで需要を満たしシステムを安定して運用するという考え方である。詳細は後述するが、未利用資源の活用のために需要家設備を含んだ多様な取引の機会が生まれる。 もうひとつの重要な変化は、エネルギーの分散化である。かつては電力会社が所有する大規模発電所で行われていた発電は、今や工場や家庭の屋根に太陽光発電を設置して行えるようになった。日本では200万軒以上の家庭に太陽光発電が設置されている。これらは家庭の全需要を満たすわけではないが、晴天の日中の需要を満たし、かつ余った電力は電力会社に販売することができる。 さらに、大容量のバッテリーを持つ電気自動車が普及する時代となった。電気自動車は移動手段でもあるが、電気自動車をコンセントにプラグインし、需要のピークに重ならないタイミングで充電をすることで電気の安定供給に貢献する。さらに、電気自動車のバッテリーに貯めた電気を家庭内で使用するVehicle to Home(V2H)や別の用途に使うV2X(総称)というエネルギーマネジメントの応用もある。 工場や家庭で使う蓄電池も普及している。太陽光発電とペアで、日中に発電した電気を貯めて夜間に使うこともできるし、夜間電力が安い地域ではこれを貯めて日中に使うこともできる。もちろん、停電したときのバックアップ電源ともなる。 太陽光発電のような分散型発電設備、電気自動車、蓄電池、調整可能な負荷は分散型エネルギーリソース(Distributed Energy Resources, DER)と呼ばれ、世界中で普及が進んでいる。 ここでUberとAirbnbを思い出してほしい。新しい設備を導入するのではなく、既存の設備を最大限活用することで需要を満たすのである。年間で僅かな時間しか稼働しない発電設備を建設する代わりに、電力システムに分散して接続された蓄電池の電力を放電すればよい。または顧客の需要を下げればよい。DERは電力供給に使えるのである。 また、太陽光発電や風力発電は変動型再生可能エネルギー(変動型再エネ)と呼ばれ、出力が一定でなく、天候に依存して変動する。従来であれば電力需要が変動し、その変動する需要に供給を合わせればよかった。しかし変動型再エネがたくさん接続された電力システムでは、需要と供給の両者が変動する。 電気は通常貯められないので、電力システムの運用では需要と供給を常に一致させる必要がある。この調整はキロワット時で計測される電気に付随するものとして、アンシラリーサービスと呼ばれるサービスの一部である。以前からアンシラリーサービスは存在していたが、垂直統合された電力会社の内部で完結して行われていた。変動型再エネが増えたため、アンシラリーサービスの需要も増える。いままで内部化されていたアンシラリーサービスの供給は、自由化・発送電分離後には外部化され、顧客の蓄電池を充放電したり負荷を調整するなど顧客のDERも使っても行われるようになった。 ひとつひとつのDERは規模が小さいので、これらを集約して制御し、小売電気事業者や送配電事業者の運用のために提供するアグリゲーターというビジネスが自由化・発送電分離後の世界では台頭する。アグリゲーターと需要家、アグリゲーターと電力会社など新しい取引が生まれる。 前掲の図にこのイメージを追記すると、図2のようになる。 ここまで見てきたように、自由化・発送電分離後の世界ではいままで電力会社内部で完結していた取引が外部化されるため、電気に関する多様な取引が生まれる。今までは電力会社が需要家に電気(kWh)を売る単純な構造だったが、電力システムの運用に顧客のDERも参加する形になる。 さらに、エネルギーの分散化の進展により新しい問題も発生する。太陽光発電の余剰電力である。太陽光発電の導入期には、固定価格買取制度など各国政府が定めた導入支援策により普及が進んだ。しかし、導入支援策は遅かれ早かれ縮小し、打ち切られる。導入支援策終了後は余剰電力をどのように有効に使うということが課題となる。従来通り電力会社に買い取ってもらうこともできるが、導入支援策なしでは買取価格は太陽光オーナーにとって魅力のないものになる。そこで、余剰電力を家族・友人にシェアしたり、地域で融通したりして有効に使おうという考えが生まれる。いままでは電力会社から需要家に一方通行だった電気の流れに、需要家から需要家(peer-to-peer)への流れが加わる。現在、エネルギー分野でブロックチェーンの応用に取り組む企業の約半分はpeer-to-peer(P2P)取引を可能にする電力取引プラットフォームの開発を行っている(日本を含む多くの国ではまだP2P取引の法的枠組みができていない)。 電気自動車の増加も取引の多様化につながる。移動体である電気自動車が出先で充電するときには取引が生じるからである。電気自動車の充電というのもブロックチェーンの応用の一分野である。 このように、いままではkWhあたりの料金で電力会社から顧客に電気を販売するだけだったが、自由化・発送電分離後でDERが普及した世界では電気に関する取引対象もプレイヤーも多様化する。ブロックチェーンをデジタル化した価値を保存・移転するのに適した技術だと捉えると、電力関連の取引の多様化はブロックチェーンの適用領域の広がりとつながる。世界中で多くの企業がエネルギー分野でのブロックチェーンの応用に取り組みを始めたのも納得がいく話である。 Profile コンテンツについて Blockchain Insightの内容(文章・写真・図版等)はすべて著作権法上の保護を受けています。編集部に許可なく無断転載することを禁止します。本文に掲載する製品名およびサービス名は、一般に各社の登録商標または商標です。 Terms of Use ICOVO AG strives to ensure that all information contained on pages hosted by blockchain-insight.ch is correct and up to date.

     

Posted by とみおICO研究員

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